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015
グッバイ マイ フレンド
西森 郁代
今日は年に一度の〈ひらひらコンテスト〉の日だ。
このコンテストは『花・フェスティバル』のメインイベントだ。ユニコーンと妖精が組みになり、集めた花びらを空高く舞い上げ、舞い落ちる様の美しさを競う。
この日一日だけ、いつもは別々の世界に住むユニコーンと妖精が、一緒に過ごせる日なのだ。
柔らかな青い毛に被われたユニコーンのパルと、橙色の羽をつけ、赤い髪を肩まで伸ばした妖精のルンナは幼なじみだ。
パルの母さんと、ルンナのママは、その昔、親友だったそうだ。だから、パルとルンナは、生まれた時から仲良しなのだ。
パルの背中に乗ったルンナは、しりとり遊びを始めた。
「パル」→「ルンナ」→「なみだ」→「ダリア」
パルがしっぽで花びらを集め、ルンナが拾い駕籠に入れていく。
赤、紫、青、薄ピンク……。
〈ひらひらコンテスト〉で優勝するより、こうして一緒に遊ぶ方が嬉しいのだ。
「パル、たくさん集まったよ」
「ほんと! きっと綺麗に舞うだろうな」
そう話している時、コンテスト開始のファンファーレが鳴った。
「さあ、行こう」
ルンナを背中に乗せ、パルが駆けだした。
金色のたてがみを風になびかせ走る、走る、走る。
ルンナは瞳を閉じると、自分がパルと風が一つになるのを感じた。
その時、がくっとパルが倒れた。
「い、痛い! ウッ……。足を挫いたみたいだ」
「大丈夫? 立てる?」
ルンナは腰に結んでいた緑のリボンを、パルの足に巻いた。
パルはゆっくり片方の前足と後ろ足で立ち上がるが、すぐフラフラとよろめき倒れてしまった。
「駄目だ、立てない。ごめんよ、もうコンテストに間に合わない」
パルの目から、涙がすーっと落ちた。
「いいのよ。ここで私達だけでコンテストをしよう」
ルンナは、駕籠から手にいっぱい花をすくうと、パアーと空高く舞い上げた。
青い花、赤い花びら、黄色の花びら。
ひらひら、ひらひら、ひら……。
花弁は、たてがみに、顔に、手のひらに、舞い落ちた。
フェスティバル終了の鐘が鳴っている。
「また来年会おう」
「足が早く治るように祈ってるよ」
「さようなら」
「サヨウナラ」
それぞれの世界に帰る道を、何度も何度も振り返った。そして互いの姿が見えなくなるまで、手を振っていた。
グッバイ マイ フレンド。
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